MT-07

MT-09に続くマスター・オブ・トルクシリーズとしてリリースされたMT-07。MT-09が積極的なライディングを望むマニアックなライダーに向けたものであるのに対し、MT-07はビギナーを中心としたターゲットを設定している。

国内モデルも設定されるMT-07は54kW@9000rpm, 68N・m@6500rpmを発揮する689cc水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒エンジンを搭載。WMTCモードで24.1km/Lという良好な燃費や、車両重量179kgという驚異的な軽さ(大型バイクとしてどころか、中型バイクでも十分驚異的)、1400mmのショートホイールベースを持ち、ビギナーにフレンドリーながら性能上不足のない能力を提供する。しかも、699,840円、ABSモデルでも749,520という驚異的な安さまで備える。

安く、燃費の良いビギナー向けモデルというとホンダのNC750Sが思い浮かぶ。WMTCモードで29.0km/L、40kW@6250rpm, 68N・m@4750rpmで、214kg。値段は668,520円だ。しかしこれを見てもMT-07が軽量で、しかも走行性能も秀でていることがわかる。ちなみに、シート高はNCの790mmに対して805mmを設定する。

このバイクの最大のポイントは、ビギナーフレンドリーだが、決してエキサイトメントを喪失していないことだという。ちゃんと回せばわくわく感があって、ヤマハらしいスポーティなハンドリングを備えるというのだ。54kWという出力は、シーンによっては不足が見えているNCと違い、ちゃんと大型としてのパワーを備えていると言える。

デザインがかっこいいかどうかは人によるだろうが、実際に見るとストリートファイターとクルーザーを合わせたような、つまりチェンタウロやグリーゾを思わせるデザインだ。また、実際にみるとパット見にはMT-09との区別がつきにくいほど似ている。よく見るとストリートファイター的だとも思うし、09よりもロードスポーツ的だ。

ヤマハには、ビギナーに勧められる鉄板モデルとしてXJ6というモデルが存在するが、その欠点は逆輸入車であり、入手も維持もややこしい部分があること、そしてあまり軽くないことだ。XJ6ベースグレードは57kW@10000rpm, 59.7N・m, のエンジンで燃料タンク容量は17.3L、車両重量は205kg(ABSモデルは210kg)となっている。これは大型バイクとしては軽量なほうだが、飛び抜けて軽いというわけではない。MT-09がYZF-R6よりも軽いので、やはり200kgがひとつの境界であると感じる。

179kgというのは、CB400SFの197kg、CB400Fの190kgよりも軽く、Ninja250の車両重量172kgと大差ない(ABSモデルならば174kgだ)。700ccという排気量を考えればその驚異的な軽さがわかるだろう。XJ6の重量はあくまで普通だが、それはあくまでバイクの中の相対であり、はじめてバイクに乗るような人にとって負担がない重量かというと問題は別となる。

XJ6はABSモデルで(現在はABSモデルのみ輸入されている)799,200と安価だが、それでも諸経費は国内モデルよりかなりかかり、パーツの供給やサポートも万全ではない。また、車両供給自体が不安定な部分がある。そのため、そう簡単には勧められない部分となるのだ。間違いなくすばらしくよくできたバイクであり、フランクライダーには絶対に勧められる一台ではあるのだが。

こうしたことから、初心者に勧められる間違いのない一台が誕生したように思う。スキルには不安があり、しかし幅広くバイクライフを楽しみたいと思っているライダーに勧められるバイクは実際は希少である。過去を見てみるとMT-03、F650CS、V750 Brevaといったバイクがそうした人に勧められた。これは、大型らしい発進で安心できるトルクがあり、ある程度のスポーツ性を持ち、それでいて過剰なところがなくフレンドリーで、ツーリングでも頼りになるバイクということだ。もっと昔ならSRXなどが勧められただろうか。

しかしこれらのバイクはあまりパワーがなく、例えば女性がそれに乗ったとして、一緒に走る男性がSSだったりすると、いやビッグNKであってもまともについていくのは難しい。この類となるのはNCだ。しかし、XJ6の57kWという出力は少なくとも潜在的には常識的な走りの範疇ではそれについていける。しかもツーリングの適性もF650CSやブレヴァ並に高い。だが、それは「尖っていない大型バイクが希少だ」という話にとどまる。

MT-07はさらにこの軽量・コンパクトという武器を手に入れた。さらに、気持ちよくふけるエンジン、軽快なヤマハらしいハンドリングをも備えているという。素直で扱いやすく、唐突さもなくて恐ろしくないという点はXJ6と同様のようだ。さらに、その鼓動感は小気味よく心地いいという。また、好き嫌いはともかくXJ6のようにいかにも安価に作ったバイクという仕立てではなく、質感が高く独特の世界観をもった外観も魅力のひとつだろう。単なるビギナーバイクではなく、独立したオンリーワンな魅力を持っているのだ。

「あるべき」すばらしい一台だと思う。

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