TD-17KVを試してきた

島村楽器に言ってTD-17KVを試してきた。 本当はTD-17KVXを試したかったのだけど、残念ながら置いていなかったのでKVのほうを。

TD-17とは

TD-17は上級エントリーモデルのTD-11のモデルチェンジとして登場したものだ。

V-Drumsの場合、TD-xxという名前の音源モジュールがあり、これにパッド等を組み合わせたモデルがTD-xxKという名称になる。 上級構成はKVという名称になり、さらに上級構成として最近はKVXというものが登場している。 また、V-Drums PortableシリーズはKPとなり、上級構成はKPXとなっている。 より充実したセットモデルには-Sとつけられている。

モジュールの価格もさることながら、どれくらいのセンサーに対応するかという違いもあるため、基本的にはモジュールのグレードが対応するパッドも決める形になり、 パッドを含めた全体のグレードを左右する。

現在のラインナップは廉価モデルであるTD-1, エントリーモデルのTD-17, ミドルクラスのTD-25, ハイエンドのTD-50というラインナップになっている。 KPに限りTD-4KPがあるが、TD-4KVは既にモデル落ちしており、TD-1KPXがより新しいモデルとしてあることから風前の灯かもしれない。ただし、モジュールはTD-4のほうが若干良い。

TD-1は完全に廉価モデルという位置づけで、低価格で提供することが第一のようだ。 機能的にも性能的にもいまひとつである。

TD-25はライブ演奏にも耐えるクオリティが魅力だ。 2015年リリースでハイエンドモデルがTD-30だった時代のものなので若干見劣りする部分もあるが、きちんと楽器として活躍してくれる。

TD-50は生ドラムにも負けない迫力とクオリティだ。 本物のバスドラムシェルを使用したり、あるいは220mmのバスドラムトリガーがあったりと見た目にも負けていない。 エレクトリックドラムの頂点に君臨するモデルといっていい。1

TD-17のポイント

TD-11は2012年リリースとちょっと古くなっていた。機能的にも性能的にも見劣りし、上位TD-25との差が激しかった。 かんたんにいえば、TD-25やTD-50がしっかりと楽器しているのに対し、TD-11は「おもちゃ」だったのだ。

TD-11Kはスネア以外はラバーパッドで、いずれも8インチである。 ちなみに、生ドラムの一般的な口径はスネアが12または13インチ、タムは2タム1フロアなら10/12/16または12/13/16インチなので、あからさまに小さい。 この小ささは叩きづらさでもあるし、生ドラムではできないような叩き方ができることにもなる。なんにせよ生ドラムを想定する練習としては好ましくない。

叩き心地もちゃっちければ音も若干ちゃっちい。見た目にも様にならないし、「あぁ、このちっこいのから音が出てるんだな」という感じがしてしまう。 それでもTD-1やTD-4に至ってはプロが叩いても救いようのない感じがしてしまうので、それと比べればちゃんとドラムしていてやっぱりグレードは違うなと感じるのだけど、見た目と叩き心地は大変に厳しい。

ROLAND Germany YouTube ChannelでTD-11を叩いている動画があるけれど、大男がちっこいTD-11Kを叩く姿はなかなか笑える。

TD-17はスネアが12インチの新しいPDX-12となり、タムはすべて従来スネアやTD-25のフロアタムに採用されていたPDX-8となった。 見た目にも迫力がましてTD-11ほどしょぼくは見えなくなった(さすがに生ドラムのような押しはないが)。

スネアは両手で叩くことの多いものなのでサイズが大きいとすごく叩きやすくなる。 強さに対する反応も素晴らしく、TD-25に採用されているPDX-100よりも強い跳ね返りと良い感触を与えてくれる。 また、PDX-100でもできないクローズドリムショットにも対応した。

キックには新しいKD-10が登場。従来よりも生ドラムに近い沈み込み感が増した。 これはTD-25Kに採用されているKD-9よりも良いものだが、TD-25のほうは220mmシェル採用の方向のようなので、この小さいバスドラムトリガーはこのクラスに落としてくる感じだろうか。

12インチパッドに続き、TD-17KVXには上級モデルの専売特許だったハイハットスタンドを使用して上下動するハイハットVH-10が採用された。 12インチなのに10という名前からしてVH-11の下位モデルという感じがするが、実は300gほど軽量化され1.2kgほどとなり、実際のハイハット(1kgくらい)に近くなった。 結果的に踏み心地はより近くなったわけだ。

KVXに至っては3枚シンバルとなっており、カップにも対応するCY-13が使われていたりする。

非常に大きいのが、生ドラムとのギャップが小さくなった。 私はTD-4KPを使っているのだが、ものすごくギャップが大きくて生ドラムで叩けるようになるまでスタジオ入りしてからたっぷり30分はかかる。 感覚のギャップがなかなか埋まらないのだ。 練習楽器としてはやはりこのギャップが小さいと非常に効果は大きい。

インプレッション

スネア

すごく素晴らしい返りだ。 生ドラムにすごく近い。完全に満足である。PDX-100よりずっと好きだ。

これだけ返りがしっかりしているとレギュラーグリップでも叩きやすい。

私はかっこつけでドラムマニアでもレギュラーグリップで叩くこともあるのだが、返らないのでものすごく叩きにくい。 オープンクローズも返らないのでやっぱりきつい。 TD-17ならものすごく自然にできる。道具が変わることで今までできなかったテクニックができるようになる、これはバスペダルを変えたときにも感じたことだ。 いい道具はドラマーを上達させる。できる道具でやっていればしづらい道具でもできるようになるのだ。

そりゃあPD-128S-BCみたいな高級感はないけれど、正直叩き心地で言えばむしろPDX-120のほうがいいくらいだ。

クローズドリムショットも可能で、見た目以外に何も不満はなかった。

タム

タムはV-DrummerにはおなじみのPDX-8だ。

PDX-8はやや小さい。いつもの感じではあるのだけれど、注意しないとリムを叩いてしまう。

なお、TD-17はタムのリムにもトリガーがつくようになっており、キットによってはリムに全く違う音が当ててあったりする。

バスドラム

あいにくセッティングが悪かったので、よくわからなかった。

ハイハット

KVであったためVH-10ではなくCY-5とFD-9の組み合わせ。 小さくて叩きづらいのもあるが、FD-9はごく奥でのみ反応するようなものであるため、すごくコントロールしにくい。

ちょっとこれはなしだ。 TD-17を使うのであればKVXにするか、KVでもシンバルはVH-10にするほうが圧倒的におすすめだ。

CY-5でもスティックの当て方の違いによる表現は反映される。

シンバル

KVだったため、CY-13はなし。

私にシンバルのテクニックがないためあまりこだわりをもって評価できない。 エッジとボウの叩き分けは(TD-25KVでも同じだが)スティックの当たり方ではなく単純に位置による。

チョークは生ドラムのようにぽんっとつかむのではだめで、がしっとつかんであげないと効かない。

サウンド

TD-25やTD-50が本格志向のために品質の高い少数のドラムキットを搭載するのに対し、TD-17はなんと50種類ものドラムキットにレイヤー機能、細かなEQやマニアックな設定と豊富なユーザーサンプリング機能を備えている。

「たくさんのキットがあっても使わない」という声もあるけれど、私の感覚からすると「使えるキットがたくさんあると嬉しい」のである。

TD-4KPの場合どれも音がしょぼいため、一番まともな音を集中的に使う、という形になりやすい。

生粋のドラマーであれば曲や状況によってキットを選ぶ、ということは基本的にしないためあまりない感覚かもしれないが、クリエイターの感覚としては曲によってドラムの音色を選択するのは当たり前のことなので、使えるキットがたくさんあることは純粋に嬉しい。

TD-15は多彩なキットがあったのだが、TD-25になって少数のキットになってしまった。 このような「遊べる電子ドラム」はTD-17がもっとも上級ということになる。

音自体はそれなりにリッチで、まぁ電子ドラムの音として十分に満足できると思う。

もちろん、細かなニュアンスを使い分けられる上級ドラマーを満足させるクオリティというわけではないが、TD-25の打点検知を感じ取ることのできないへぼドラマーの私としては十分に満足なサウンドであると感じた。TD-11と比べれば明らかに良い音になったし、TD-50譲りというだけあって表現はともかくサウンド自体はTD-25にひけをとらないものになった。

ユーザーキットがたくさん登録できるので、DTMをやる人間としてはよりリッチな音源を搭載するという選択肢もある。

非常に残念な点としてはリムショットの音がどのキットでも微妙なことだ。

その他の機能

ソング機能があるのだが、短いループで種類も少ないのでおまけのようなものである。

コーチ機能はTD-25にも搭載されているタイプだ。 クリック、クイックレコーディング、タイムチェックが搭載されている。 さらなる練習にはMelodics for V-Drumsを使う、というのが現在のRolandのスタンス。

ソング機能、思ったよりかなりいい感じだったのでもっと種類を搭載してくれると嬉しいのだけどなぁ。

総評

素晴らしかった。

何を求めてるのか、という点を置き去りにはできないのがエレクトリックドラムで、 上級モデルになるとそりゃあ音や演奏に対する感度は素晴らしくなるけれども、その一方で大きくなるし、遊び心のある機能は減る。

だから、単純に無理して上級モデルを買ってもがっかりしてしまうことだってあるのだ。

かといって求めているのより下のグレードを買っても音や表現力に納得できなかったり、練習やプレイに十分な機能を提供していなかったりするのだ。

Rolandの場合、TD-50は基本のできていない初心者を想定していないのは明らかだけれども、「これからドラムうまくなりたい」という人にとってはTD-1, TD-17, TD-25という3つの選択肢があるということになる。

置けるなら、買えるならTD-1はないかなぁ、と私は思う。 フィーリングも音も、かなりいまいちだ。

で、TD-17かTD-25かという話だと、生ドラム派はTD-25のほうが気に入るだろう。 TD-25のほうがサウンドは優れているし、表現力もある。生ドラム派の人なら多少大きくても機能が少なくても、キットの種類が少なくても気にならないし、逆に音そのものや表現力はとても気になるだろうから。

その上で、KVXの話をすると、25KVXはどちらかというとステージ志向だし、対する17KVXは練習用としてパーフェクトだ。

私は、ドラムが好きだ。

もともと私はオルガニストだし、コンクールにも出ていたのだが、当時からあまりオルガンが好きではなくて、ドラムが好きだった。 リズムをとるのが好きで、全身でリズムを表現したかった。そのほうが解き放たれている感じがしたし、私は旋律よりもリズムを欲しがっていたのだ。

EL-70にはリズムシーケンサがあるのだが、この機能を使うと鍵盤を叩くとドラム音が出るようになる。 これで何時間も延々リズムで遊んでいたこともあった。

オルガンなら2時間の練習もイライラしてたまらないのに、ドラムだったら5時間叩いたってニコニコしていられた。 ドラムを叩くという行為が好きだった。

ドラムに向いていたわけでもないし、決してうまかったわけでもないから、バンドでドラムを担当したことはない。 実はドラム叩けるんですよ、って言っても相手にされないのがいつものことだった。 だから私は誰かに披露することもなく、ひとり楽しみとしてドラムを叩き続けた。

ドラムマニアというゲームはそんな私にとってぴったりのものだった。 現在は音楽に合わせてドラムを叩くハードルは随分下がっているけれど、当時の私にとっては「音楽に合わせてドラムを叩く」という行為は手に入り難いものだったのだ。 だから私は真剣に、楽しくドラムマニアをやり続けた。

私にとっては、第一にドラムを叩くことを楽しみたい。 そして、第二にそのためにうまくなりたい。 これが私がドラムにもとめていることだ。 必然的に生ドラムを叩く機会は少ない(スタジオでわざわざ叩かない限りは機会がない)ので生ドラムに対する意識はそこまでなくてもいいけれど叩く感覚自体はあまり差がないほうがいい。そのほうが楽しみの幅が広がるから。

TD-4KPだってそれなりに楽しいのだけれど、なんか十分に楽しめていない。 「あれ、ドラムってこんなもんだっけ」感がある。 大きな原因はビーターが戻るたんびにぱおんぱおんなるわすっこ抜けるわのバスペダルにあるのは明らかなのだけれども2、小さいし狭いしぐらぐらするし、音はしょぼいし、セッティングにたっぷり30分かけてやるほどは楽しめない…というのが現状だったりする。

「そんなこと言っても、もしかして私はドラムが楽しくなくなってしまったのかなぁ、最近ドラムマニアもそこまで楽しめてない気がするしなぁ、うまくなってきたのになぁ」なんて思っていた。

TD-17KVを叩いて、楽しかった。 掛け値なしに楽しかった。

叩いたときのフィーリングと音というのは、これほどまでに楽しさに直結するのかとものすごく驚いたほどだ。

叩いて楽しいということで言えば様々なキットがあることは楽しさにつながるし、メトロノームだけではスイッチが入らないときにはソング機能が体を動かしてくれる。 素晴らしい。

ドラムを自在に叩けて、その中でドラムと対話を重ねながらうまくなれる人にはあまりに足りないだろう。 でも、私はまだまともに叩けるほどにもうまくないし、グルーヴが出たら嬉しいな、ちゃんと叩けたら嬉しいなというレベルだ。 そして、楽しく叩きたい。ドラムを叩くことそのものを楽しみたい。 そんな私にはぴったりだと感じた。楽しければたくさん叩くし、そうしたらうまくなるから。うまくなれば、もっと楽しくなるから。

TD-17KVXでドラムマニアやったらめちゃくちゃ楽しそう…と思ったのだけど、そうか、DTXManiaをやればいいのか。 TD-17KVXでDTXMania…涎が出そうだ。


  1. 実際には頂点に君臨するモデルとして対抗するものとしてATVのaDrumsというのがあったりする。もともとRolandでV-Drumsを作っていた人が作っていて、こちらはもっと生ドラム寄りだ。

  2. 現在はIRONCOBRAになっているので全く不満はない。いや、ツインペダルでないのは若干の不満かもしれないが。

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主宰。
音楽家であり計算機使いであり、ライダーであり声優でもある。

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