ドラムマニアと本物のドラムの違いをもうちょっと突っ込んで話す

YouTubeにドラムマニアができたらドラムは叩けるのか?なんて動画も上がったことだし、 このブログで2番目の人気記事なので、今回は「ドラムマニアとドラム」という観点からお話をしてみようと思う。 (前回は「ドラマーから見たドラムマニア」という観点だった)

なお、話は「違い」という点に限って綴る。 必要であれば前記事を読んで欲しい。

また、本物のドラムといっても、私はV-Drummerなので、生ドラムではなくV-Drumsを中心に説明していく。

演奏要素の違い

ドラムマニアの場合問題無用で9つである。 レーンは9つしかないし、これ以外の判定はない。

エレクトリックドラムの場合、いくらでも増やせるので難しいが

  • シンバルはボウとエッジで2種類とミュート (通常2枚)
  • ライドはボウとエッジ、カップで3種類とミュート (通常1枚)
  • ハイハットはオープンとクローズの無段階(ものによって異なる)、さらにボウとエッジの2箇所 (1枚)
  • タイコはヘッドとリム(リムはヘッドに抑える、リムごとヘッドを叩く、リムだけを叩くで3種類) (通常4つ)
  • バスドラムはヒットと、ヒット後離すか離さないか(ここをコントロールすることは多分ほとんどない)
  • ハイハットペダルは踏んで鳴らす(ペダルハイハット)のと、鳴らしたあと踏み続けるか否かのコントロール(と、ハイハットのオープン状態のコントロール)

エレクトリックドラムではかなり高級機にならないと発生しない違いだが、叩く位置によって音は変わる。 また、シンバルに関してはエレクトリックドラムでは打ち分けられないが、スティックを当てる角度と、そのまま振り切るか返すかでも音が変わる。

ドラムマニアではハイハットペダルとツインバスペダルの左側を一緒くたにして「左ペダル」という扱いにしているが、ダブルバスドラムにしない限りはバスドラムを左右どちらで叩くかには違いが発生せず叩きやすいようにやれば良い。 ダブルバスドラムの場合も普通は同じバスドラムを使うため、叩き分けというのは普通はしない。

配置の違い

非常に大きな点として、「普通はハイタムはスネアドラムよりも右」である。

タムホルダーは2台組のホルダーになっている場合が多く、ラックは中央にタムホルダーをつけるようになっているため、タムは中央に2個並ぶ形になるのだけど、スネアドラムは一般的に左手に近い位置に配置する。 だからハイタムがスネアドラムより左側になるセッティングというのはあまり一般的ではない。

ハイタムをスネアドラムに配置しづらい理由のひとつとして、中央にタムホルダーがある上に、バスドラムを中央に配置するからというのもある。 バスドラムを中央に配置するのは見栄えの問題なのだが、ラックを使う場合中央以外ではバスドラムが収まらない場合が多く、やはり中央になる。 スネアドラムはタムのようにラックから生えるわけではなく地面に置くスタンドを使うため、中央においてしまうと右足が収まらなくなる。

ドラムはバスドラムがあるほうが正面なのだが、そこに右足を置く以上、体は向かって右方向を向くことになる。 ただし、このように奏者から見て左を向くフォームはよくないとされ、「右足を前に出す」感覚で体を常にひねって演奏する。

もうひとつ大きな点として、ドラムマニアはスネアドラムとハイハットシンバルがものすごく近い。 そもそも、あんな近いとペダルの間にスネアスタンドが入らない。

一般的にはハイハットシンバルはもっと高くして、スネアにかぶさるように配置する。 この場合、ハイハットペダルはもっと遠い。

私はこのコントロールが苦手で、腕もしんどいので、シンバルをより回り込むように配置している。 右手でいうと、標準が左前方、左手と右手は上下で重なるような位置になるのだが、この配置だと右手はまっすぐ左という感覚に近く、左腕の肘と手首の中間あたりに右手がくる。 この場合クロスの度合いが強くなり、脚を大きく開く必要がある。また、左手でハイハットシンバルを叩きづらいので、ハイハットを連打するようなときはスローンを左に回転させて叩く。

ハイハットとスネアが狭いことは、ドラムマニアのプレイヤーがオープンハンドで叩く人が多いことの理由のひとつだろう。

シンバルを傾けるかどうかは好みによるのだが、ハイハットを傾けることは余程特殊なことをしない限りできない。 ドラムマニアもハイハットが傾いていなければ本来の感覚にそれなりに近い。

ドラムマニアのタム配置はやや高めだが、おかしくはない。個人的にはタムはもっと低くして角度をつけるので好みではないけれど。 さらにいえば、フロアタムは下げて少し角度をつけるので、こちらも好みではない。

もっとも配置の違いで最も大きいのは「好みに合わせられない」ということだと思う。 「自分好みの配置でないと叩けない」というドラマーも珍しくないので、この点はかなり大きい。

ちなみに、旧ドラムマニアの配置は比較するのが難しいぐらいおかしかった。

パッドとペダル

ドラムマニアのパッドはヤマハが提供しているのだけれど、昔のDTXに近いもので、跳ね返りが重い。感触はよくない。 実際のヘッドはもっとぽいんぽいんと跳ね返る。また、エレクトリックドラムでもメッシュパッドはもっとぼいよんぼいよんと跳ね返る。 生ドラムのヘッドよりもメッシュヘッドのほうが跳ね返りが強いのだけど、跳ね返りが強いだけでなく跳ね返り方が独特で、感覚が違う。

ただし、よっぽどヘッドをだるだるにしていない限りはスティックを立てた状態から少し勢いをつけて落とすだけで跳ね返りで垂直まで戻るくらいの反発力があり、ドラムマニアのパッドのような衝撃吸収感はない。

もっと違うのはシンバルである。

ハイハット以外のシンバルは固定されていないため、エッジをショルダーで叩くと抵抗はあるものの跳ね返らない。 シンバルを叩いてからタイコを叩く場合、特に振り上げる必要はなく、腕を回転させるように一気に叩くことができる。

逆にボウをチップで叩くとものすごく跳ね返る。ヘッドよりももっともっと跳ね返る。 だからシンバルの連打というのは意外と簡単。

動かず跳ね返らないシンバルというのは本当に違和感が強くて手首を痛めることすらある。 実際にドラムで可能な奏法が使えないことも多い。

また、ドラムマニアのシンバルにはエッジにリムがあるが、実物は当然ながらない。 だから叩く感覚も違うし、叩き方にも大きく影響する。

ハイハットをショルダーで叩いた場合の感覚はドラムマニアのパッドは割と近い。

ハイハットペダルの感覚は全く違う。 なんといってもハイハット自体が1kgはあるため、結構重い。これを操作する以上の力があるスプリングがあり、結果すごーく重いのだ。 エレクトリックドラムでもハイハットスタンドを使えるタイプのハイハットはかなり高級なので、「単なるペダル」のものを使うことが多いのだが、単なるペダルのハイハットペダルで練習していると「生ドラムだとちゃんとハイハットを閉じられない」なんてことが普通にある。 あと、重いスプリングを使っているため、軽快にちゃきちゃきするのはかなり大変である。バスドラムなんかよりよっぽど難しい。

バスペダルもドラムマニアはただのスイッチだが、実際はタイコを叩くので反動がある。 さらにスプリングとチェーン、ベルトあるいはリンケージによって戻るようになっているのでそこそこ重い。勢い良く踏み込む必要があるし、ポンポン当てるのではなくガツンと押し当てる意識が必要になる。実際、ガツンと当たる感覚もある。

ちなみに、私の気のせいかもしれないけれど、ツインペダルを使うと左のほうがだいぶ軽い。 いや、左は常にバスペダル上にある右と違って踏み変えているから勢いがついているだけかもしれないが。 あるいは、ハイハットペダルが重いので相対的に軽いバスペダルが軽く感じるだけかも…

バスペダルの感覚はバスペダルによって非常に大きく違うし、バスペダルは調整幅も広い。特に高級機は非常に細かく幅広く調整できる。 バスペダルは高いものだと15万円をこえるものもあるし、スタジオやライブハウスにペダルだけ持ち込むドラマーも多い。1

譜面

もちろんドラム譜とドラムマニア譜は全然違うのだけれど、違いは実はそこではなく、 「ドラムマニア譜は先が読みにくい」という点が大きい。

そもそもドラムマニアの場合タイミングが命なので、叩く瞬間の譜面を気にすることになる。 対して、一般的には楽譜は楽譜を見ながら叩く場合でも4小節は先を見ておかないときつい。 ドラムマニアでは4小節先までだそうとするとかなり低速でないといけない。この感覚の違いは大きい。

ドラムマニアでは目の前のことを考えるため、すぐに叩けるようになる。単に叩くことだけを考えればドラム譜なんかよりよっぽど話が早い。 ドラム譜の場合、初見で叩ける人は割と少なくて、繰り返し確認しながら身につけていく感覚だ。

ドラムマニアの譜面ではドラマーでもエクスプレッションを気にするのはかなり難しいし、それだけでなくどうしても組み立ての甘い、わたわたした叩き方になる。 実際にはドラムを叩くときはそれが何のリズムでどういう手順で叩くかということを考えながら先の譜面を見ているので、組み立てができている。 ドラムマニアの譜面の場合、目の前に来てからでも叩けてしまうのでいきあたりばったりになってしまう。 基礎練習で嫌というほどやっている手順でもいざドラムマニアだとできなかったりする。

また、実際のドラム譜にはドラムに即した対象や奏法の違い、表現などについても書かれているためドラムマニアのように流れてきてすぐに読めるようなものではない。

なお、ドラマー以外にはあまり知られていないが、ドラム譜には完全に決まった書き方があるわけではない。ある程度のお約束があるだけである。 基本的には

  • スネアより上はタム、下はフロアタム
  • ×の場合はミュート系、⮾の場合はオープン系(派手)の音、タイコ(ヘッド)は実音符
  • シンバルはハイハットが一番下、それより上はシンバル類
  • バスドラムは一番下

あたりがお約束であり、だいたいの位置も何種類かお約束がある。

演奏と表現

ドラムマニアの場合単にスイッチが入るかどうかだけの問題なので、押すような演奏が可能なのだけど、ドラムはエクスプレッション、その強弱こそが演奏の要である。 もちろん、たいていの楽器にエクスプレッションはあるものだけど2、ドラムの場合それが非常に大きな割合をしめている上に、ドラムは強弱によってまるで違う音(同じものを叩いているとは思えないくらいの)が出る。生ドラムでないと難しい部分ではあるけれども、最近はエレクトリックドラムもかなりレベルの高い再現がなされている。

ドラムでは撫でる程度に叩くこともあるのだが、これはドラムマニアでは反応しないため、スコアを安定させるためにも基本的になるべく一定に叩くことになる。これは奏法に大きな影響を与える。

また、叩く位置、スティックのどこで叩くか、どんな角度で叩くかでも大きく音が変わる。 これを意識する必要の有無がかわるほか、これは反発の仕方にも影響が出る。

反発力の違いでオープンクローズ奏法やダウンアップ奏法が使いにくい。 できないこともないが、妙に力がいる。

ハイハットシンバルは基本的にオープンクローズに関わるものなので、「踏むもの」ではあまりないのだが、この概念がドラムマニアにない。 加えて、ペダルを鳴らすためではなくオープンで叩いたハイハットを止めるために踏むこともある。この違いもドラムマニアにはない。 さらに、「ハイハットペダルを離すタイミング」という概念もドラムマニアにない。

また、シンバルをつかんで反響を止めるシンバルミュートというのがあるのだが、これはドラムマニアでは決してすることはない。

実はかくいう私も昔練習に使っていたエレクトリックドラムがシンバルミュートができなかったため、シンバルミュートの練習をしておらず、シンバルミュートができない。そのほか打点によるエクスプレッションもできない。 エレクトリックドラムのほうが綺麗に叩くのが簡単なので、細かなところが行き届かないレベルでは表現にかなり差が出る(エレクトリックドラムのほうが上手く聞こえる)。

また、ドラムにおいてはツインペダルにおけるバスの左右の区別がないためどっちから入ろうが、どこでダブルを入れようが自由なのだが、ドラムマニアだと正確に指定されてしまい自由度はない。

意識と要点の違い

ドラムマニアの場合「ヒットが入るかどうか」だが、実際にはかする程度のヒットもちゃんと意味があるため「ちゃんと叩けているか」という意識はしない。より細かく様々に気にするかわりに、ドラムマニアのスコアアタッカーのような緻密さでは気にしない。 これはタイミングも同じで、ドラムでは「リズムがキープできていること」「グルーブがあること」が重要なので、音符から70ms以内に叩く、みたいな気に仕方をすることはない。

ドラムマニアにはコンボという要素があるため、抜けてしまうくらいなら多少ずれていても叩き続けたほうが良いとなっているのだが、実際はリズムとグルーヴを保つことのほうが必要なのでリズムがよれてきたら譜面から要素を省略して本来のリズムに戻るほうが重要となる。 また、多少間違っていても、リズムがよれていてもきちっとグルーヴ感が出るようにエクスプレッションを保つほうが重要である。

つまり、実際のドラムでは「リズムをいい感じに叩き続ける」ことが重要なのだが、ドラムマニアの場合できる限り降ってくるチップを拾うことが重要になる。 この違いは根本的なところになり、意識の違いや全体的な演奏の違いに直結している。

また、ドラムは見られている意識も必要になる。レコーディング時はともかく、人に見られるのなら見た目が悪いよりはいいほうが良いにきまっているからだ。 そのため、ドラム演奏テクニックの中には「音としてはあんまり意味がない」「音を出すことには全く関係ない」「単に叩きづらいだけでメリットはない」ものが結構たくさんある。だが、そんなテクニックを駆使してかっこよく叩けなければ二流にもなれないのが現実だ。

体力

ドラムマニアの場合、自分の演奏が音として反映されないため、いい加減な叩き方だろうがそこまで気にならない(そもそもたいていは音はよく聞こえないけど…)のだけど、ドラムではそうはいかない。 そもそもエクスプレッションがキモだからそれ抜きに叩くということはありえないし、ドラムマニアの感覚からすればずっと強い力で叩くことが多い(逆にすごく弱く叩くことも多いが)。

さらにいえばパッドがドラムマニアほど近くないので腕を振るのも大きい。シンバルを振りきるのも結構な力がいる。

だからドラムマニアとは比べ物にならないほど体力がいる。 ドラムマニアは1曲1分半ほどだが、普通は5分程度あるためこれも体力を大きく削る。 ドラムマニアでは力を抜いて省エネで叩くこともできるが、ドラムの場合省エネで叩いたところで表現には気を遣っているし省エネ度合いが違う。

とはいえ、これは私が叩くドラムマニア譜面が8.50程度までであることも大きく影響している。 高難易度譜面になると非常に高密度でチップが降ってくるため、跳ね返りの弱いパッドがそのまま体力勝負になってくる。

ちなみに、ドラムで達人、神、人外レベルの人たちが叩く譜面というのはまさに人外譜面、超越的であり、ドラム譜面として考えればドラムマニアの9.9クラスの譜面は中級程度に過ぎない。3 これに表現が加わりさらに難易度が跳ね上がる。この次元になるともはやゲームとして成り立たないし炎上してしまうだろうが、これで正確性を要求したりしたら鬼畜の所業だろう。

ドラムがうまい人は人外どころか生物かどうかの怪しいくらいなので4それはそれはやばいのだが、ドラムマニアの上級プレイヤーのように淡々と一定かつ正確に叩き続けることもできない。 その精密動作はノリと感覚が大事な音楽家とは全く違うもので、「ゲーマーってすごいなぁ」とつくづく思う。


  1. ちなみに、私はアイアンコブラ powerglideを愛用している。がしっとした踏み心地と短いストロークを構成したいのだ。

  2. ちなみに、リコーダーにはほぼない。

  3. 実際私が練習している曲は「ドラムがちょっと叩けるようになったら叩けそうな曲」でしかないのだが、ドラムマニアの譜面にしたら8半ばは余裕である。

  4. 「この地獄のドラムマシンどもがぁ!」と思ってしまう人たちも結構いる

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音楽家であり計算機使いであり、ライダーであり声優でもある。

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