Sugar*Styleのお話

“Sugar*Style”はSMEEによるアダルトゲーム。 前作“Making*Lovers”が大変気に入ったので、私としては実に20年ぶりにゲームの予約をしてしまった。

予約をしたのは単に「Making*Loversがよかったから」ではなく、「体験版をやったら面白くてたまらなかったから」でもある。

結構注目点が多かったので、ちょっと他の人が見ないような視点でのこの作品について話してみたいと思う。

なお、同じくアダルトゲーム記事の“ワガママハイスペック”のときのような内容ではないので、それは先に申し添えておこう。

構成の話

この作品、構成がちょっと変わっていて軽く驚いた。

“Making*Lovers”では共通ルートがほとんどなかったのだけれど、“Suger*Style”では「共通エピソード+ヒロインエピソード+役割エピソードの前半」と「個別ルートの後半」となっている。

共通エピソードに関しては流星群のシーンとMVPのシーンにおいてほんのわずかに選択ヒロインによって文章が変わるだけで、基本的に共通になっている。1

ヒロインエピソードだが、この作品ではプロローグの終わりのほうでヒロインを選択するようになっていて、基本的にそれ以降選択肢はない。そして、選択したヒロインとのエピソードが前半で挟まれていくことになる。

役割エピソードはヒロイン選択のあとに役割選択があり、これによってエピソードが変化するのだが、開発ブログではヒロイン4人と役割4つで4×4通りのシナリオがある」という説明があるが、実際には役割エピソードは選択ヒロインには関係なく共通なので、4周でコンプリートになる。 “Making*Lovers”ではデートプランでかなりのエピソード幅があった(しかも2回あるデートでの組み合わせも含めて細かにセリフが変化する)のでコンプリートするのが大変だったけれど、今回はより簡略化された。 デートプラン同様のおまけ要素である部屋探索も単に「途中でやめられる」というだけの話で変化はない。 なので、ごく単純に異なる選択で4周すれば良いようになり、コンプリートにかかる時間はかなり短くなった。(ただし、後述するように文量は増えた)

つまり、前半は「選択によって3種類のエピソードの組み合わせが変わる」ということである。

後半は個別ルートで、ヒロインごとに完全に固定のシナリオになっている。

ボリューム

“Making*Lovers”は基本的にプロローグのあと個別ルートであったことから、全体的に文量が少なかった。 インストール後容量は4.1GBほどである。 アフターストーリーまで含めても「フルプラとしては短めかな」と感じるくらい。

今回は共通ルートがかなり長く、さらに役割エピソードもはさまることからルートごとの文量はかなり増えて、時間もかかるようになった。そのため、容量は3.9GBと減ったにもかかわらず、「長くなった」と感じるようになった。 “Making*Lovers”の場合、共通テキストはプロローグ以外になく、プロローグすら一本道ではない(ヒロインごとに別のルートになる)ため、短く感じる割にはテキスト総量は多かったようだ。2

スキップ量も増えたので「スキップがだるくなった」という面もあるが、できればスキップせずにゆっくり楽しみたい。

なお、一部背景は使い回されているが、これはファンにとってはむしろ嬉しい要素なのではないだろうか。

お勧めしやすくなった

“Making*Lovers”は結構クセの強い作品で、私は大好きだけれど、万人受けはしなさそうなものだった。 主人公もヒロインもキャラクターが嫌いな人も多いだろう。

また、後述するように同作は非常にリアルなので、異性慣れしていない人には違和感があったりするだろうし、嫌な感じがしたりもするとも思う。

それと比べ“Sugar*Style”はやや二次元作品寄りになり、キャラクターも前作ほど尖っていないため割と勧めやすくなった。むしろ個性が弱いとか、シナリオ的にもショートストーリーをつなぐ形で盛り上がる要素がなにもないため盛り上がりにかける…と思うかもしれないが、肩の力を抜いて「楽しむ」のがこのゲームだと思う。

“Making*Lovers”では可憐ルートと亜子ルートは全体としてのストーリーがあったが、可憐ルートのストーリーは「なくてよかったのではないか」という気がしてしまうものなので、今回全体のストーリーが特にないことは残念には感じない。そういうストーリーのなさが恋愛におけるリアリティを感じる部分でもあったりするし。

絵が前作よりうまくなってアクが弱まったことも勧めやすくなったポイントのひとつだ。 また、BGMやSEも前作ほどクセがない。

ただ、BGMに関しては「癖がなくなった」という面が大きく、例えば“Making*Lovers”ではチャプタージングルが「今日も楽しかったよ」の頭2小節となっているけれど、私はこれは好きだったし、BGM全般結構好きだった。 “Sugar*Style”は楽曲全般(ヴォーカル曲を含めて)おとなしめだ。さらにいえば、タイトルもおとなしめになった。 でも、「淡い光を追いかけて」「アークトゥルスを指差して」「Syn@pse」あたりは結構好き。なお、BGM変化が短くなったため、スキップしてると慌ただしく変化するようになった。 似たような話だと、まばたきが開始タイミングが遅く、セリフ中には入らないことが多いので、オートモードでやっていると気付かなかったりする。

好感度とリアリティ

“Making*Lovers”におけるヒロインの言動は思考形成や誘導遷移として非常に正しいもので、ライターの恋愛経験の豊富さをとても感じるものだった。 非常に生々しくて、過去の恋愛を思い出さずにはいられないくらいだ。

ちなみに、「創作物の会話」と「自動生成した会話」、そして「実際のカップルの会話」のすべてを提示すると、多くの人が「創作物の会話」を最も自然なものであると感じ、実際のカップルの会話は「できが悪い創作」であると考える傾向がある。

個人的には「実際の人間のモデルを完全に無視して記号化されたキャラクター」というのはかなり苦手である。 オタクの文律とでも言うべき言動のパターンがあるのだが、私としてはここに人物性を感じることができず、気持ち悪く思えてしまう。そういうノリが嫌いだというのもある。 こういうのはゲーム作品よりも、ラノベに多い。さらにいえば、ネット小説なんかだとほとんどがそれで占められる。

例えば、現実では女児はかなりしっかりしていて、このような記号化された程度の会話であれば4, 5歳で軽くこなすし、もっと驚くべき発言も見られる。一方、男児は多くの場合驚くほど単純で、「多いが浅い」傾向が強かったりする。

このような事実をどの程度捉えているか、ということであり、「子供を子供っぽい記号で捉えている(実際の子供がどのような思考を形成するか見ていない)」というのは創作物に限らずあることだ。3 同様の問題から作品を通じておおよそのキャラクター感、つまり「幼さ」や「確かさ」のゆらぎが決まってくる。例えば、ゆずそふと作品はどれも登場人物が大人であるか子供であるかにかかわらず一貫して幼く無邪気である。

対して“Sugar*Style”は“Making*Lovers”より基本的にはヒロインは若返った(16から20歳。Making*Loversでは18歳から20代後半)のだが、それでも依然としてかなりしっかりしていて大人である。 デフォルメされた分いくらか幼くなった感じで、“Making*Lovers”の高校生組であったレイナ及び亜子と比べると、最年長のかなめであっても幼い。ただし、これに関しては実際は「現実における実年齢相応に近づいた」に近く、“Making*Lovers”では全ヒロイン設定年齢としては「大人びている」ものだった。

そして、面白い要素として、「選ばなかったヒロインの好感度はずっと低い」というのがある。4 別にヒロインが他のキャラクターと交際をはじめるようなことはないのだが、主人公に対しては「嫌ってはいないがあまり好感も持っていない」というようなスタンスを見せることが多い。特に真央は好感度の低い発言が多く、ルートとはギャップが大きい。

ただ、これに関しては明らかに問題がある部分もある。 役割エピソードは選択したヒロインが反映されないため、役割エピソードにおいてはすべてのヒロインから好感度が低すぎる。これは、共通エピソードと比べてもだいぶ低い。 この、「女性ばかりの集団生活の中でのポジション」という強調なのだろうが、やりすぎである。特に真央が性格悪く見えるシーンがちょっと多い。役割エピソードのヒロイン描写は結構雑で、恐らく共通エピソードからは独立して執筆されたのであろうことがうかがえるのだが、このせいもあって役割エピソードはいまいちなものがとても多い。

交際シーン

アダルトゲームに限らず創作物において交際シーン(告白シーン)は重要であり、かつ非常に悩ましいもののひとつだ。 見せ場であるから思い切りドラマチックにしたいものだが、現実にはドラマチックな交際開始というのはあまりなく、主観的にはドラマチックでも客観的にはそうでないことがほとんどである。 だから、のめり込んでドラマチックに感じるように工夫をこらすのだが、割とパターンは少ないし、どうしても面白みに欠ける。無駄に困難を用意して却って白けてしまったりするものだ。

“Sugar*Style”の交際シーンはいずれも非常に珍しいものであった。 同エピソード内の流れでどのような告白がなされるかは読めてしまうのだが、それでも驚きを持って読むことができる。好きなのは真央のシーンだが、初楓の流れが一番驚いた。 描写的にはゲームだからこそできる部分も大きいのだが、特にこの部分には一枚絵もない。それでも見どころだ。

なお、晴だけが普通のシーンになっている。

システム

システム面では相変わらずいまひとつである。 BGVがないなんてのもあるが、「ボイスリピートにキーが割り当てられない」というのはちょっと痛い。

セーブデータは190スロット。 各エピソードは大体56ずつ(共通エピソードは前後半で)であるため、実は「各エピソード冒頭でセーブ」はできるのだが、やはりちょっと少ない。ただ、前作と違って足りなくなる感じではない。

シナリオ

相変わらず改変仮想恋愛感の強いシナリオである。

ありがちな余計なストーリーが入り込んでくることがなく、ストーリー的な意味で言えば徹底して駄文である。 こういうのはゲームか4コママンガでなければ許されない贅沢だ。小説でも、漫画でもストーリーが展開することが求められる。 エピソード集というのは書くのがとっても楽だが、文量が制約されるとすっごくきつくなる。5 エピソード集はどうしても長くなったり短くなったりしてしまうのだ。

そして、「誰かと過ごす時間と空気感」を表現しただけのエピソードというのは「人といる楽しさ」に対する仮想的感覚である。 だから、なんともハッピーなシナリオなのだ。個人的には「恋愛ものにはこれを求めてるんだよ!!」と思ってしまう。別に死んだり事故にあったり病気になったり障害が現れたりしなくていいのだ。そういうのは現実でお腹いっぱい。

ストレスも少ない。個人的には嫌な感じがする、あるいはハラハラするところからカタルシスを感じるよりも、純粋にハッピーな物語のほうが好きなので、こういう現実から恋愛の楽しさやハッピーさを抽出したようなシナリオを超ウェルカムである。 (創作物の中でまでストレスを感じたくない)

私としては「全キャラクター好き」という作品は希少でもあった。 だいたい、何の作品でも「このキャラクターは嫌いだなぁ」と感じるキャラクター、あるいはそこまでいかなくても特に魅力的には感じないキャラクターがいるものだ。だが、“Sugar*Style”はどのキャラクターもとても(私にとっては)魅力的だった。

問題はクセがなくなった分、薄味で分量も少ないとなると「物足りない」ということである。 共通エピソード含めると全オートで1ルート12時間くらいかかるのでそれを「物足りない」と言うべきかどうかは疑問だが、これはシナリオがいいからこのヒロインとの日常をもっともっと見ていたいと感じる、という面も大きいだろう。

しかし、この人は、この作品に限らず毎度「なんの変哲もない恋愛の一場面」をこれだけ書き続けてよくネタ切れにならないものだ。ほんと感心する。

おすすめ

前作以上に「おもしろい」。 作り込み度合いなどを考えると“Making*Lovers”のほうが力が入っていた感じもあるのだが、前作よりもよりおもしろく、そしてあたたかく作られている。 感動要素は少ないが、楽しく、そして恋愛物語として読み応えがある。 「ひだまり荘」を舞台にしているだけに、とても暖かな作品だ。そして、おもしろい。

体験版をやって、プロローグで笑ったら買って損なしではないだろうか。

ただ、通常版でいいと思う。 裸パッチは私としては結構どうでもいいし、今回はヴォーカルトラックに関してもそれほど惹かれなかったし、 私はAmazonで買ったのでAmazon特典のシステムヴォイスが入っていたのだけど、かなり使いにくい。いや、こういうのは実用を考えるものでもないのかもしれないけど。


  1. MVPのシーンはヒロインではなく役割によって変化する。私はなるべくヒロインと関わりの深そうな役割を選択し、役割イラストと同一の選択をしたのだが、この会話からすると 初楓=House Work, 晴=Security, 真央=Carpenter, かなめ=Entertainerがベストなようだ。ほんの3つ分の会話でしかないが。

  2. だが、ワガママハイスペックなんて10GB以上あり、ものすごく長かったのでそういうのと比べるとだいぶ物足りない。ワガママハイスペックはファンディスクのOCですら6GB以上ある。

  3. こういうのは私の研究分野である。

  4. 例外的に晴ルートだけルートに入るタイミングから全員の好感度が高めで推移する。他のルートと違って他のヒロインからきついことを言われることがない。

  5. 私は物語も書く人だ

About haruka

主宰。
音楽家であり計算機使いであり、ライダーであり声優でもある。

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